映画『ヒトラーを欺いた黄色い星』4人のユダヤ人生存者が語る硬派なドキュメンタリー風映画 個々人の実話から浮かび上がる様々な人間模様

久々のkbcシネマ。

映画好きあるあるかもしれないが、気になる映画というのはとことん重なるものだ。(見たいときに限って見たいものがない)

さて本題。

kbcシネマでは結構な頻度で「ヒトラー(ナチスドイツ)」関連の作品を上映している。

やはり「ユダヤ人迫害」というテーマは、単純にお客さんを呼び込みやすいのだろう。

加えてここは鑑賞者の年齢層が高めなので歴史ものを見たい人が多いのかもしれない。まあ近年の日本を見ていれば「独裁者」という言葉がよぎるのも当然だろう。

予告動画

あらすじ

アドルフ・ヒトラー率いるナチスドイツは、ユダヤ人を敵視し、膨大な人々を惨殺してきた。その一方でドイツの首都ベルリンには、ユダヤ人たちがさまざまな場所に潜伏し、生き延びた人々もいた。激しい迫害と戦火にさらされながらも、必死に生き抜いたツィオマ・シェーンハウスさん、オイゲン・フリーデさん、ルート・アルントさん、ハンニ・レヴィさんの証言を基に、物語が展開する。

この映画を見たきっかけ

予告動画を見た段階では、正直見ようかどうしようか迷っていた。

というのも、サイコスリラー系の映画や戦争映画はホラー映画並みにドキッとする場面が仕掛けてあることが多いからだ。

「ダンケルク」を見たときは正直、冒頭三分でギブアップだった。背後から不意の射撃。それもノーラン監督は余計なところに力を入れてくれたようで、その緊迫感たるや、本当に狙撃され逃げ惑っているような感覚にさせられる臨場感だった。

昔は大丈夫だったのに、いつからか激しい音を聞くと身体ごとビクッとなる癖がついてしまった。

一度ならまだしも、そういうシーンの連続でことあるごとにビクついていたのでは、不審がられるし周りの鑑賞者の妨げになるのが嫌で、最近は敬遠気味だった。

しかし、公式サイトにあった著名人の声の中に荻上チキ氏のコメントが目に止まった。

「殺された600万人」でも「大量のユダヤ人」でもない。彼らには一人一人、名前も人生もあった。隠れ、生き残り、伝えること。それが小さな抵抗だった。

この一文を読んで、劇場へ足を運ぶこととなった。

抽象的ネタバレ考察(感想)

結果、この映画は硬派なドキュメンタリー風の良質な映画といった感じで、安心してみることができた。

古い映像と音での空襲場面を除けば、爆音のようなシーンはないし、生々しい残虐なシーンそのものもなかった。

それはやはり、この映画が生存者の証言に基づいており、彼らの肉声がインタビューというかたちで映画に取り入れられているからだろう。

銃声の鳴り響かないナチス映画というのも珍しいのかもしれない。

だけどそれが却って、当時を生き延びた彼らのリアルが伝わってきた。

大きな事件というのはどうしてもその被害の規模や数字、などマクロな視点で語られることが多くなってしまう。

たしかにあらゆる事象は、最初に全体像を知り、そこから細部をたどっていくほうが理解がしやすい。

最初から細部を語っていては、その概要を知っているものだけにしか伝わらない。

という前提はあるにしても、だ。

そこを出発点にミクロの視点をたどらなければ、本質的なことに近づくことは到底できないのだ。

例えば、2~3日前に残虐な事件を起こした逃走中の殺人犯について「追跡」するような番組であっても、あれはミクロに見せかけたマクロでしかない。

テレビで語られているようなものは所詮、お茶の間を目指したお茶を濁すような情報でしかなく、たとえそれが具体性を帯びている事柄であっても、結局、型でしかない。

真実を知るということはときに、覚悟を要求するからだ。

世に放たれている戦争映画のいったいどれだけが手垢がついてないと言えるだろうか。

歴史は決してドラマではない。そんなことを再認させられた。

個々人の実話から浮かび上がる様々な人間模様。

流される人、抗う人、逃げる人、裏切る人、手を差し伸べる人。

もしもあの場にいるのが自分だったら。

実際に、発覚すれば殺されるかもしれないのに、見ず知らずの他人を匿い、食事の面倒まで見てあげていた人がいたというのは、人間に残された僅かだけど力強い希望を感じられた。

自分の勉強不足もあると思うが、ユダヤ人虐殺はドイツ国内では大規模かつ秘密裏に行われていたという事実をこの映画ではじめて知った。

迫害されていたユダヤ人女性の一人は語る。ホロコーストのような残虐な行為を知ったのは終戦後2~3年経ってからだったと。

比較的淡々と終戦までの日々が描かれていくが、その内容はズシリと重い。

しかし決して押し付けがましいところはなく、僕たちに考える余地を与えてくれる。

歴史って本当に知れば知るほど、体感として視野が広がっていく気がする。