漫画家 香山哲 資本主義社会に生きづらさを感じている孤独なマイノリティにこそ読んでほしい

僕が香山哲さんを知ったのは、あの震災から1~2年経ったあとと記憶している。

というのも、僕はそのくらいの年、疑心暗鬼になっていた。

原発を巡るさまざまなことについて、だ。

なぜここで原発の話なのかというと、出会いがそれだったからだ。

少し前置きにお付き合いいただきたい。

あの頃の自分

震災が起こる前から僕は政府や企業のいうことに懐疑的だった。

まあそれはほとんど、条件反射的なもので、

何を言われても噛みついていた気がする。

今となっちゃ、この世の節理というか、

噛みついたって仕方のないこと、それが世界であり人間であるのだと、

いろいろな本を読んだり生活するうちにわかってきた。(だからといって悪事を肯定するわけではない)

だけど震災当時はまだストレスを溜めた二十歳の若者だったわけで。

大きなものに噛みつきたいという隠れた欲求は、許されて然るべきだろう。

原子力発電とは

そもそも原発というものがなんなのか。

震災前に知っていたのは、

低コストエコだということと、

冷やすために海の近くにあるということぐらいだった。

少なくとも、危険なんてイメージはそれほど強くなかった

単純にあまり勉強熱心な学生ではなかったので、聞き逃していただけかもしれないが。

震災直後、まだ情報統制が上手くいってなかった頃、

テレビから流れる映像で、大人たちが慌てている様子を見て、

どうやら危険なものらしいぞと思い、それからぼちぼち自分で調べるようになった。

香山哲 原子力発電の基礎知識

そんな折に見つけたのが香山哲さんのアプリ、

「原子力発電の基礎知識」だった。

原子力発電の基礎知識 / 香山哲

原子力発電の基礎知識 / 香山哲
無料
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香山哲独特のコミカルな絵柄と、博識な彼の言葉がいい具合にミックスされ、

読者はスムーズに読み進めることができる。

「原子力発電について簡単に知りたい」

という人があれば、迷いなくこのアプリをおすすめする。

それくらいとても(いい意味で)軽く読むことができる。

それでいて、読者が意識さえすれば、目は養われる

実際に僕がそうだった。

それは原発に限った話ではない。

「この国で生きている人間として考える」ということそのものについて、

考え始めるきっかけとなった。

「原子力発電の基礎知識」のあとがきだけでも読む価値がある。

これほど冷静に注意を促しつつ、自分の特技である漫画という手段を使って諭してくれる大人がいることに

当時の僕は感動した。(その感銘はいまでも続いている)

それがきっかけで、香山哲という人の作品をもっと知りたくなった。

特筆すべきは識字率の高さと細部までこだわったデザイン性

内容はさることながら、

デザインというやつは、本当に奥が深い。

「何を描いて、何を描かないか」

香山哲のファウスト

暗い性格のまま24歳まで生きてきた主人公「中道シーゲル」は、天使「メフィストフェレス」と契約し、少年時代に帰ろうとする。

タイムスリップを成功させるため、1980年代の少年たちが夢中になった文化を愛する彼の力(ノスタルヂカラ)を証明し、自身の「今を生きるのに向いてない」性質を徹底的に見直す物語。

彼の代表作ともいえる作品が「香山哲のファウスト」だ。

ファウストはおそらく、ゲーテの戯曲であるファウストからとられているのだろう。(読んだことないので内容は知らない)

彼がどういった人間であるか、それを手っ取り早く知りたいなら、この本をまず最初に読むといい。

青春を楽しめず、そのままズルズルと過去を引きずって生きている人間や、資本主義社会のシステムに馴染めず、窮屈さを覚えている人間にとっては、共感しかない。

作者の圧倒的な観察力・洞察力に読者は魅了されていく。

「1」という番号が振られているので、続編にも期待したい。

ちなみにこの作品は、2013年の「文化庁メディア芸術祭審査員特別賞」を受賞している。

なお、作品はネットで無料公開されている。↓↓

心のクウェート

ポーランドの喫茶店で出会った人物と話をする中で聴いた「心のクウェート」とは、クウェートとは別の“ここよりもっといいところ”。

その心のクウェートにいつか辿りつく事を思いながら、約2年に渡り断続的にポーランドからドイツそしてバルト方面へと旅する空想まじりの旅行記コミック。

香山哲の暗部を知ったら、次は光だ。

圧倒的な安心感。

この作品については言葉で説明するのがチープに思えてしまうので、とにかく読んでみてください。

こちらも無料で読むことができます。

ベルリンうわの空

ドイツ、首都ベルリン。ベルリンといえば、壁、ビール、ソーセージ。だけじゃなくって、様々な文化、様々な人々…、パリや東京とも並ぶ国際都市だ。そんな街で僕は…、僕は…、あんまり何もしていない!

香山さんは時々ベルリンに移住して暮らしたりする人なんだけど、

べつに志高く、ってわけじゃない。そこがいい。

すごく等身大。

そんなどこにいても等身大の香山さんが見た、ベルリンの景色を日本と比較したりしながら、なにもしないけど、日々小さなことを観察してそれを綴った漫画。

ebookjapanというアプリをダウンロードすれば、全編無料で読めるのでぜひ。

この作品は、とても読みやすいし、香山さんの人となりが色濃く出てる作品だと私はひそかに思っている。

街の本屋さんには売ってない ぜひ彼のお店(ネットもあり)で購入してね

香山氏の本は、どこにでも売られているわけではない。

限られた場所でしか販売していない。

それは、彼の生き方の表れでもある。

香山さんのおかげで、原発のことはもちろん、自分のお金の使い方についても考えるようになった。

今現在価値が認められている絵画のなかには、

生前には誰にも見向きもされなかった、売れない画家の絵もあると聞く。

香山哲はそんなアーティストのひとりだと僕は思っている。

彼の作品が気に入った人は、購入して応援してあげてください。