『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか』アラサーアラフォー女性に贈る、という受け売りに留まらない我ら世代の抱える寂寞に寄り添う人生指南書書評エッセイ

出会いは偶然だった。

女性読み物コーナーに何気なく目を走らせたとき、思わずそのタイトルと表紙の涙ぐむ女性の絵に惹かれた。

中身を確認するまでもないと思ったが、念のため一頁目をめくる。

この本のタイトルを見て、あなたはどのように感じただろうか。

「今の自分の状態や気持ちそのものだ」と思って手にとってくれた人が、けっこう多いんじゃないかな、なんて予想している。

かく言う私も同じだ。そして―

32歳、独身、彼氏なし、非正規雇用。

これが現在の私のプロフィールである。

既にこの時点で胸に込み上げてくるなにかがあった。

なぜ、このプロフィールを見ただけで私たちは言い知れぬ寂寞の思いに囚われなければいけないのだろうか。

 

念のため断っておくと、私は男だ。

それでもこの世代の女性が背負わされている色々なものの重みがわからない人間ではない。

それは同情といった厚かましい感情だけではなく、他人事であるとはどうしても思えない当事者意識があるからだ。

 

一人が好き。だけど寂しい。

人と遊ぶ。ちょっと疲れる。

やっぱり一人が好き。だけどやっぱり、寂しい。

 

そんなわがままな自分は、人に流されやすいということもなければ、かといってどっしりと構えていられるようなタイプの人間でもない。

自分が人に会わない金曜の夜は、酔っ払いながら楽しそうに練り歩く集団の横を、ビュンと風を切って素早く通り過ぎる、ぐらいの意地悪をしたくなるくらいにはひねくれている。

 

著者である「チェコ好き」こと、和田真里奈は大が付くほどの本と映画好きだ。

それこそが、彼女がいまの境遇をそれほど悲観することもなく、たくましく(?)生きられている証拠でもあるようだ。(そもそもなぜ悲観しなくてはいけないのか、ということに世の中に対して疑問がなくもないけど)

それは訥々と語られる彼女の言葉の端々から感じ取ることができる。

 

そんな彼女が、どんな境遇にあっても自分軸で生きるための(女性の悩みを中心に)さまざまな本を紹介しつつ、その本について著者が考えたことを(ネタバレしない程度に)添えて、生きるヒントを与えてくれる人生指南書となっている。(紹介されている本を読まなくとも、脳への刺激に溢れている)

 

私がとくに印象に残ったのは、「いつか隣の誰かを責めないために心の中の悪を知っておきたい」という章だ。

 

人間は一貫性のないものを嫌う。

このことは「一貫性の法則」として心理学でも証明されている。

グレーという状況をあまり好ましく思わない生き物なのだ。

 

だが、それに反して人間という生き物そのものは、グレーな存在なのだ。

彼女は昨今の男女間の問題について、こう考察する。

セクハラや#MeToo、男女の問題も、「抑圧する男性」「抑圧される女性」なんて、きれいに分かれた単純な構造で考えることはできない。

男性の扱い方を心得て生きているMちゃんという女性。

Mちゃんのような人はときに、過激なフェミニストの人たちに「女の敵」と呼ばれる言説も、ネットなんかだと珍しくない。

そんなMちゃんの心にも、筆者は思いを馳せる。

Mちゃんもきっと、はっきりと口にしてはいなかったけれど、このまま女性たちが不当な扱いを訴え続けてその声が大きくなれば、自分の能力を使いにくくなると察しているんじゃないだろうか。

それでもやっぱり私の理想としては、女性が悲しい思いをして傷つくことも、Mちゃんの能力を封殺することもしたくない。

 

私自身昨今のこの男女問題が互いにいがみ合っている構図に、ずっとモヤモヤを抱えていた。

男性である私が言及することは憚れる雰囲気。

それは違うんじゃないか、と言えない絶対正義のような言論。

グレーであることが許されない空気。

 

それがまさか女性の口から聞けるとは思っていなかった。

 


とはいえ、本書はそんなに社会問題云々を重たく扱っているわけではない。

 

お金、美容、恋愛、結婚、独身、社会、ライフイベント、セックス、愛、人生と多岐に渡るテーマを取り上げている。

あまり深くは考えず、雑誌をパラパラと捲る気持ちで読み進められる本となっている。(ひとつのテーマについて2~3頁で完結する)

 

現時点でamazonレビューが無いのが不思議なくらい素敵な本なので、多くの人に読んでほしい。