映画『寝ても覚めても』彼女はサイコパス?邦画らしからぬ異質な恋愛映画 演技映像脚本は近年の邦画界とは一線を画す稀有な作品だった

鑑賞したきっかけ

髪を切ったあと用事を済ませて、それからちょうどいい時間帯になにかいい映画やってないかなあーと調べて見つけたのがこちら『寝ても覚めても』。

公式HPサイト(http://netemosametemo.jp/)のイントロダクションを読んだだけで興味をそそられたのだ。

映画館で邦画を見るのは万引家族以来となった。

予告動画

あらすじ

大阪に住む21歳の朝子は、麦(バク)という青年と運命的な恋に落ちる。しかし、彼はある日、忽然と姿を消してしまう。それから2年後、大阪を離れ東京に引っ越した朝子は、麦に外見はそっくりだが性格は違う男性・亮平と出会う。麦の事を忘れられない朝子は亮平を避けていたが、亮平は朝子に好意を抱く。戸惑いながらもだんだんと、朝子も亮平に惹かれていく。麦と亮平。同じ顔をした、過去と現在が朝子の心を揺らしていく。

抽象的ネタバレ考察(感想)

おそらく多くの鑑賞者がまずはじめに思うことは、「朝子って、なんなの?」だと思う。

僕はというと、中盤から彼女のことはサイコパスだという認識で見ていたので、あの誰もが目と頭を疑う行動にも特段驚かなかった。(というかクスっと笑ってしまった)

朝子の心の内ではなにが起こっているのか、まったくといっていいほど映像ではわからなかったので、原作を読んで解消されるなら、一度読んでみたいと思った。

 

まず、とにかく役者が光っていた。ひとつひとつのシーンにリアリティがあり、不穏な空気さえ、こちらにまで伝染してきそうだった。

僕はTVを知らないが、この映画に出演している者の大半は、おそらく有名な俳優女優ではないと思う。(東出を除いて)

 

日本の、僕ら世代の恋愛映画というのがずっと嫌いだった。

それはスポンサーや事務所の思惑という糊が役者に絡みつき、本来本能的で動物的であるはずの「愛」に、

まったく熱というものを感じられなかったからなのだと、この映画を見て気付かされた。

 

ああ、あの感じは錯覚ではなかったのだと。

キスシーンでもハグをするシーンでも、俳優と女優の間にいつも見えない壁を感じていた。

「ほんとにこいつは彼・彼女のことを愛しているのか?」と、

「本当にこれが、人を好きになったり、抱きしめたりしたことがある人間の仕草なのか?」と。

 

それは当然で、生々しさなんか求めていないのだ。

生々しさを人間から奪ったら、なにが残るというのだろう。

少なくとも僕は、そういう作品を見たいとは思わない。

どんなにそれが醜く、汚くても、人間を直視するときには否が応でも溢れ出す。

「汚い川だな」「でも、きれい」

偶然だが、最後のシーンで交わされた2人の言葉が、僕の言わんとすることとリンクしている。

 

「カメラを止めるな!」といい、時代は広告塔の俳優なんか、飽き始めたのかもしれない。

本物が認知されるという流れは、日陰者にとって本当にうれしい。

 

 

映画の中では地震や電車の遅延、河川の増水、東北復興、難病といったテーマが上手い具合に散りばめられている。

おそらくこれは時代性を考慮したものだろう。

天災の持つ意味が311以降、日本人の中で本当に変化してきているのは、みなさんお気付きだろう。

永遠に続くかと思われるこの生活も、一瞬にして終わることがあるのだと、

たびたび各地で起こる災害を見るにつけ、誰の心にも漠とした不安が頭をもたげている。

 

そんな声にならない声を掬うかのように、映像は淡々と我々に何かを語りかけてくる。

その言葉ははっきりとは聞き取れない。それでも心に、小さくて静かな松明を灯してくれるような、そんな気がした。

 

亮平と朝子が追いかけっこするシーン。

あれはおそらく撮影中のミラクルなんだろうけど、

彼らの後を追うように、雲が移動していってた。

日が差しているところといないところのコントラストが妙に美しくて、笑った。

そういう行間も楽しめる映画。

 

ちなみに主演の東出昌大ですが、ファンにとっては鼻血もののシーンがわんさかあります。

僕がもし女性だったら胸キュンしまくりです。濡れます。

いやー、彼はこの映画のなかではダントツに有名人の部類ですけど、演技上手いですね。

とくに亮平役がハマってる。(バクはびみょう~)

やはり演じる人間も、自然な人間のほうが役者も演じやすいのかもしれません。

IQゼロのイケメンの「好きだよ」なんて、女子高生以外に需要があるのでしょうか?

邦画界はいまいちど、女性の好みについて真剣に考えたほうがいいと思いますよ。

さいごに

とはいえ、脚本に甘さもある。まあ原作がどんなか知らないけど。

ここまで細部が繊細に描けていながら、作品の骨子である部分は説得力に欠ける。

伸びしろがまだまだあると思うので、この監督の作品はこれから要チェックだなあ。

 

てか思ったけど、おれ恋愛映画見る率高くね?

なんだかんだ恋したいんだな。

あー誰か駆け引きとかすっ飛ばして付き合ってくれる子いねえかなあ。と都合のいいことを考えている今日この頃である。

 

監督 濱口竜介