『パン屋のお金とカジノのお金はどう違う?』お金や労働に対する価値観を見直すきっかけをくれる最初の一冊

思えば、映画『BIUTIFUL』から始まったのだな。

『貧困』について、真剣に知りたいと思ったのは。

でもまあ、だいたいこの時点で僕は甘ちゃんだなと思う。

自分が裕福なわけではないけど、実家暮らしだし、諸事情もあって、衣食住に困った経験はいままで生きてきて一度もない。

正直な話、

「来月節約しなきゃな」

こんな程度のことさえ、考えたことがない人間だ。

考えなくてもいい環境に居るから。

それもまあ、親が生きている限りの話であって、自分のいまの稼ぎでこの生活を維持するのは厳しい。

それ故か、自分が裕福だとは思っていない。(かといって貧しさを感じたこともない)

話が逸れた。

世界中を見回してみると、『貧困』はそんなに珍しいことではないらしい。

貧困と聞いて僕らが想像するのは、どこか遠い国の出来事。

…いや、これも定かではないな。なんせ、友人・知人が少ないのでその現実の情報量が少なすぎて、実体はつかめていない。

意外と身近に「生活が苦しい」と感じている人はいるのかもしれない。(いまの政治は国民のことまるで見てないし)

まあ、少なくとも僕は『貧しさ』ってものが、「輪郭のはっきりしない、どこか遠い場所にあるもの」だと思ってた。

※たまたまいまさっき、とあるニュース記事を見たんだけど、「日本人は、自分が貧困層に属しているという自覚がない(認めたくない)人々が少なくない」という。「実際には貧困層に属しているのに」だ。

だから自ら貧しいと主張できない、声を上げない人が多い、云々。

これはたしかに、生活保護に対する世間の反応を見ていれば、火を見るより明らかだ。

そうした面を踏まえると、この国でも貧困はもはや、とても身近な問題であり、僕たち一人一人が真剣に考えていかないと、いずれ大変なことになる。

とまあ、最初から重たくなってしまったが、今回紹介する本は、

そんな重たくなりがちなテーマである、現在の資本主義経済の仕組みについて教えてくれると同時に、建設的かつ具体的な『新しい経済システム』が紹介されている。

これは実際に各国で実施されており、その効果を上げているものがたくさんある。

本書は悲観的になりがちなテーマに光を当てながら読者をちょっぴり啓蒙し、希望と勇気を与えてくれる、という有難い本だ。

本書を読む前に

本書の内容をより理解するためにも、紹介しておきたい動画がある。

動画は全部で4本あるが、トータル20分くらいでサッと見れる。

これを見れば現在の経済の問題点が浮き彫りになってくる。

動画ではアメリカといっているけど、日本もほぼ同じ立場だと考えていい。

新しい経済、もうひとつの経済

そういうわけで、今回僕はそうしたお金に関する本を二冊(2001年に書かれたものと、2016年に書かれたもの)、手に取って読んだ。

どちらも共通して「新しい経済」「もうひとつの経済」というのが大きなキーワードとなっており、

そのうちの一冊がこれだ。

『パン屋のお金とカジノのお金はどう違う?~ミヒャエル・エンデの夢見た経済・社会~』

こちらの本は、2001年に書かれたほうで、今から17年も前になる。

情報はかなり古いかもしれないが、残念なことに?(うれしいことに?)、

本書の内容に沿った視点から見てみると、その当時から現在まで、日本の現状は、ほとんどなにも変わっていないようだ。

「地域振興券」や「地域通貨」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれないが、本書の後半では、まさにそれが取り上げられている。

「地域通貨」が日本で導入された始まりは、地方などの経済を活性化させる目的で作られたようだ。

しかし、理由はさまざま考えられるだろうが、これが日本ではあまり普及しなかった。

「地域通貨は終わった」なんて最近の記事も見かけたが、考え方そのものは、軽視できない力を秘めていると思う。

世界各地で「地域通貨」という発想が生まれた歴史を知っておくことは、決して無駄なことではない。

また、本書ではないが2016年に書かれたほうの『雇用なしで生きる』というスペインを舞台にしたルポには、「時間銀行」という新たな試みや、世界各地で進化を遂げた地域通貨も登場してきている。

さらに、時代は電子マネーや仮想通貨にシフトしているタイミングでもあるので、何かしら活路は見い出せるはずだ。

その入り口を知るためにも、本書は最適だと思う。

ミヒャエル・エンデが見ていた世界

本書に書かれているのは、普段私たちが使っているお金。そのお金を辿って見えてくる社会や経済といった大きな流れについてだ。

いえ、心配はご無用。本書は、一見小難しく見える『お金』や『経済』の話を、日頃本を読まない人にも、とてもわかりやすく解説してくれている。

また、本書のサブタイトルにもあるように、この本には、児童文学の執筆者としても知られているドイツ作家「ミヒャエル・エンデ」の作品や、彼の残した言葉を題材にして、時として難しい表現を、私たちにもわかりやすい言葉に置き換えて語ってくれている。

上記に載せたyoutubeの動画は、過去にNHK-BSで放送された「エンデの遺言」という番組で、本書のなかにも番組の内容がところどころ抜粋されている。

本を読む前でも後でも、この番組を見ておくとより理解が深まる。

パン屋のお金とカジノのお金

巷には、お金について書かれた本は、ゴマンとあるが、

本当に、その本質的な部分について書かれたものは数少ないのではないだろうか。

お金の本というとそのほとんどが、稼ぎ方のほうに注目が集まりがちだ。

それはもちろん、誰だってお金は欲しいだろう。それを非難するつもりはない。

だけどもし、あなたが本当に欲しいのはお金ではなく、安定や安心であるとするなら、稼ぐ方法を追うよりももっと現実的で、未来に僅かでも希望を見いだせる道を模索したほうが余程いいのではないか、と個人的には思う。

ひとつ断っておくと、僕はこれまでに「お金についての本」をたくさん読んできたわけではない。

はっきり言ってただの直感だ。

ただ、ずっとモヤモヤした思いがあった。

それは自分でもはっきりと意識できていたわけではないけど、

最近になってようやくわかってきた。

スキルはあるのにお金にならない、定職に就けず、食うに困る、というのはどういうことなのか。

言われてみれば、本当に変な話だ。

本書の言葉を借りるなら

ここで問題なのは、この二つの場合、どちらも同じお金が使われていることなのです。株や通貨などのカジノ的な投機市場ではもはや、ふつうの交換手段としての経済の何十倍ものお金が動いています。そして、その投機市場がおかしくなると、ふつうの経済にも悪影響が出てしまうのです。バブルがはじけて、それまで値上がりする一方だった株や土地が一気に暴落してしまい、(中略)ここでは投機目的のお金がおかしくなったために、ふつうの交換目的のお金までおかしくなったのです。

(前略)この場合の経済は、英国経済や日本経済などとても大きな範囲で運営されているもので、その景気次第で同じ商売をしていてもものすごくうまくいくときもあれば、さっぱり業績が上がらないこともありますが、個人の努力とは関係ない部分に生活が左右されている

引用が長くなってしまったが、ようするに生きるために必要なお金と、資金を増やすというゲーム目的のお金が同じテーブルの上で扱われていること自体が根本的におかしいのだ、という指摘だ。

それならば、その欠陥のある社会システムを覆すのか、というとそうではない。

これだけ広がってしまったものをいきなりやめることはできるはずもない。その煽りを受ける人が出てくることは容易に想像ができるだろう。

本書を読むまでは、それが当たり前だと思っていた。現在の金融システムは絶対不変のルールだと思っていた。

しかし、違うのだ。いまのルールだって人間が作ったものだ。

であるなら、自分とは関係のない場所で起こった投機の失敗による煽りを受けた「ふつうの交換目的のお金」を使っている人たちが路頭に迷わないセーフティーネットを築く、彼らだけの補完的な社会システムを構築することはルール違反ではないはずだ。

これは、そちらがその世界で生きるなら、我々は別のルールで生きる、という生き方の選択肢の話でもある。

現在の社会は勝てる人、戦える人にとって、こんな好都合なルールはない。

いや、これまで連戦連勝を続けている人たちだってリスクはある。

負けないために日々戦い、戦々恐々とし、ひとたび戦いに敗れれば多くを失う。

生きている意味さえ忘れて。

単純に僕は現代のビジネス(売り方)が嫌いだ。

「おまえいくつだよ?」と言われそうだが、

とにかく消費を促すためだけに、いらないものを作って売るために嘘をつくなんて、僕は間違ってると思う。

そんな自分の考えが子供じみていて偏っていることも承知しているつもりだ。

今の自分の仕事だって大なり小なり誰かを騙して成り立っていることも知っている。

だけど、「本当にいいもの」が「大量にあるもの」の前にかき消されてしまう現実に憤りを覚える気持ちもわかるでしょ。

本書で語られるのは、単なるお金の話ではない。人間の尊厳を含めた生き方の話だ。

これは、自然環境(生物全般)といってもいい。

なんにせよ、見て見ぬふりはそろそろやめる頃に差し掛かってると思う。

追記:

いや、これは少なくとも、自分自身の話だ。誰かに強要したいわけじゃない。

誰かにわかってもらいたい、と思うとき、どうしても相手を説得しようとしてしまう。

だけど違う。知ってほしいというのは事実だけど、それによって個人の考え方を変えてやりたいとまでは思わない。

人にはそれぞれの生活があり、生きてきた環境があり、どうにもならないことだってある。

 

さいごに

思いがまとまらない(まとまるはずもない)まま書いてみたけど、

とにかく面白く読める本なので、「現代社会ってなんだかなあ…」と漠然と思っている人は、一度図書館とかで借りてみることをおすすめします。

僕も図書館で借りたのですが、一度読んだだけじゃ、意味を掴めないところもあるし、内容が面白すぎて手元に一冊持っておきたいなあと思って中古漁ってるとこです。

…なんか最後らへん辛気臭くなったので、音楽の力を借りようと思います。

これがまたいいんだなあ。

最近はこればっか聴いてます。