映画『パレードへようこそ』性的マイノリティという垣根を超えて LGBTと炭鉱労働者の友情から生まれた感動の実話

この映画を見たのは2015年。

劇場で見たときからずっと忘れられなくて、DVDが発売されるとすぐにamazonで注文した。

それから繰り返し見てはさまざまなシーンで涙ぐんでいる。

 

性的マイノリティを題材にした映画は、世の中にたくさんある。

そしてそれは大抵、奔放さを過剰に描かれてしまっている感が否めない。(彼らにだって色んなタイプの人間がいるはずなのに)

この映画も御多分に漏れず、そういうシーンはいくつか見られた。

 

それでもなお、この映画に惹きつけられてしまうのは、性という垣根を越えて、

本来一人一人の人間が持つべき「pride(誇り)」を掲げよと、見る者に静かに力強く訴えかけてくるからだ。

 

この映画を見終えたあなたは、実話から生まれたからこそのリアリティのある力強いメッセージを、いくつも受け取ることになる。

予告動画

あらすじ

英国サッチャー政権下、境遇の違う人々をつないだ深い友情と感動の物語。不況と闘うウェールズの炭坑労働者に手を差しのべたのは、ロンドンのきらびやかなLGSMの若者たちだった! すべては、ロンドンに住む一人の青年のシンプルなアイデアから始まった。炭坑労働者たちのストライキに心を動かされ、彼らとその家族を支援するために、仲間たちと募金活動を始めたのだ。しかし、彼らが実はゲイの活動家(LGSM)だと知ると、寄付の申し出はことごとく断られてしまう。そこへ、勘違いから、唯一受け入れてくれる炭坑が現れる!彼らは、ミニバスに載ってウェールズ奥地の炭坑町へと向かうが…。

抽象的ネタバレ考察(感想)

あまりにも感情移入しすぎてしまっていて、冷静に書ける自信がない。

とりあえず、「自分はこう感じた」という点をいくつか挙げることにしようと思う。

主人公がいない みんなが主役級

あえて主人公を挙げるなら、マークやブロムリーあたりになるのだろうが、

この映画には脇役がいない。みんなが主役級。そう思わされる演出・脚本、カメラワークなのだ。

登場人物それぞれが重要な役を担っていて、誰の存在も肯定してくれているように感じられた。

それは現実の世界にも通じることなのかもしれない。

折り合いのつかない人間関係 それもまた人生

「みんなが主役級」とは言ったが、それはなにもみんなが「いい人」だというわけではない。ちゃんとイヤ~な人間というのが登場する。

しかしそんな彼女にさえ、彼女がなぜそういう性格になってしまったのか。そうした背景までが仄めかされ、分類するとしたら悪役なのだけど、人として憎みきれない人間味が丁寧に描かれている。

そうしたところにも、この映画の温かさが感じられる。

 

結局彼女は最後まで自分の考えを曲げることはない。

だが、そんな折り合いの付かない人間関係というのがあってもいい

「馬が合わない人間がいるなら、距離を置くのもいいだろう」と、この映画は教えてくれているような気がするのだ。

冴えない地味な人間にもスポットライトが当たる

個人的には、ビル・ナイ演じるクリフに、思わず自分の姿を重ねてしまった。

心の内には燃える情熱があるにもかかわらず、空回りしてそれをうまく言葉にすることができない

そしていつもいざという大事な場面で発言できず、黙り込んでしまう。

そんな冴えなくて地味で、最後まで勇気を持てない心の弱い人間にさえ、光を当ててくれている映画は、いまのところこの作品以外に私は知らない。

青年が大人になるまで 成長の物語

当時のイギリスでは、LGBTの集まりに参加していい年齢は21からと法律で決められていたが、

ブロムリーは20歳の誕生日にその法律を破ってしまうことになる。(なお、仲間にいわれるまで知らなかった模様)

学業をサボって法を破ったことが親にバレて、父親は激昂し、外出を禁じられる。

親がダメだっていうから…」という言い訳をするブロムリーに対してマークが言い放った言葉が忘れられない。

巣立ちできない青二才に喝を入れてくれる。実家暮らしの理由を親のせいにしていた当時の私の心に、この台詞が突き刺さり、思わず劇場で涙したのを覚えている。

映像と音楽が素晴らしい

80年代のブリティッシュサウンド、といわれても「?」な世代だが、

それでも音楽がとてもカッコいいということはわかる。

ジョナサンのダンスシーンは本当に圧巻。

思わず私も「踊りを教えてくれ!」と、画面に向かって言いそうになった。

 

そして、映像がとにかく

LGBTのレインボーフラッグを意識してのことだろう。とにかく映像のワンシーンワンシーンの配色に気を遣っているのがよくわかる。

まとめ

もちろんテーマはジェンダーの問題を主題に置いているのだが、これは誰が見ても感動できるのではないだろうか。

 

以前、「あざといくらいわかりやすいキャラクターばかりで、ご都合主義的な映画だ」と酷評しているレビューを見たが、その意見もわからなくもない。

真の当事者にしてみれば、そのように感じてしまうかもしれない。

だが、個人的にはこの映画に関しては、そうした性差、性的マイノリティの人々に絞って焦点を当てた映画というよりも、そのテーマを越えた「性格も役割も異なる人間」という広い意味で、「性的マイノリティという枠組みに拘わらず、人間それ自体がすでにそれぞれが歪であり、異なっているし、異なっていていいんだ」というようなメッセージが込められているような気がした。

私は批判的レビューを見てもなお、この映画が好きだ。自信を持っておすすめしたい。

 

監督 マシュー・ウォーチャス