小説『クワイエットルームにようこそ』松尾スズキ 感想

人は絶望に直面すると、微笑を浮かべるという。

松尾スズキ著『クワイエットルームにようこそ』は、可笑しさの中から、絶え間ない悲しさが溢れ出している。

同作品は、2006年の芥川賞候補作にも選ばれていた。

ストーリー

物語は、主人公の明日香が、閉鎖病棟にて身体を五点拘束された状態で目を覚ますシーンから始まる。

頭が徐々に冷静になるにつれて、明白になっていく目を背けたい事実。彼女が病棟に運ばれた経緯が、ページを捲るごとに、徐々に明らかになっていく。

鬱をテーマに散りばめられたコメディ

鬱や自殺を題材にしていながら、重くなりすぎないのが、すごくいい。

この物語は、主人公・明日香の一人称で語られていく。彼女の目線で語られる現実の出来事は、たとえ悲しくても、なぜだか可笑しさが込み上げてくる。それは彼女の性格によるものだったり、取り巻いている環境であったりする。

明日香の口から語られる過去は、全面的に同情を誘えるようなものではない。むしろ、本人にも非があるんじゃないかと言いたくなる。

それでもなぜか、彼女の心情を慮り、泣いている自分がいた。

感想

『クワイエットルームにようこそ』に登場する人物はみんな、「どこかヘン」だ。それは、精神病院の内と外、に限らずだ。

そしてそれはそのまま、僕たちが生きる現実の世界の人間にも当てはまると思った。すごく真面目な人。正義感の強い人。傍から見ると、決してそんな感じはしない人であっても、「どこかヘン」な部分を抱えている。

正常と異常って、単なるブレーキの利き具合によって、白線の内側に止まれるかそうでないかで決まるのかもしれない。

松尾スズキという人

松尾スズキさんのことは、劇団の人、ドラマにちょい役で出る人、すね毛がえらい濃い人、ということしか知らなかったが、この本を読んだだけで、メンタルがこっち寄りの人だってのがよくわかった。